2007年7月号

T.繊維学会誌、繊維機械学会誌等に2007年6月号で掲載された化学繊維素材の紹介記事

繊維学会2007年度年次大会予稿集より掲載
1.繊維学会 技術賞 受賞講演

繊維を用いた電磁波遮蔽材の開発
  新家英正、後藤昌則、高木進 p13

 ポリエステル繊維に無電解メッキ法で金属皮膜が形成された電磁波シールド素材(プラット)について解説。PDP用電磁波シールドメッシュ素材の必要性能は、ア)電磁波シールド性能、イ)可視光線透過性能、ウ)モアレが発生しないこと、エ)表面反射防止性能、オ)コストなどがある。プラットでは、次のような技術に留意している。

ア)黒色度アップ
  当初の電磁波シールドメッシュは黒色樹脂を電着方式により銅メッシュ上に付与したものであったが電磁波シールドメッシュ自身には表面導通性がなくPDP本体への接地が不十分で電磁波シールド性能不足が懸念された。次に開発した電磁波シールドメッシュは銅メッシュ表面にニッケル合金からなる黒色金属皮膜層を電気メッキ法により形成させたもので表面導通性が改善された。しかしこのメッシの電磁波シールド性能は十分であったが、黒色度が低く(グレー)、表面が平滑で反射防止性能に劣っていた。そのため電磁波シールド性を維持しつつ黒色度を向上させた電磁波シールドメッシュの開発を行った。黒色度を向上させる手法として、銅系皮膜形成法あるいは改良ニッケル合金形成法による電磁波シールドメッシュの開発製造を行った。

イ)細線化
 前面フィルターには電磁波シールド性能や光学特性だけでなくモアレ発生防止も重要である。モアレは発光セルやブラックストライプとメッシュ模様が干渉することから発生する。モアレの発生原理より糸径が小さいほどモアレは目立ちにくくなる。客先ごとの最適織密度の設定および製織性を考慮に入れた糸(糸質、糸径)選定によるメッシの設計で従来にないPDP用に特化された電磁波シールドメッシュを開発した。

ウ)耐久性
 電磁波シールドメッシュは前面フィルターとして樹脂あるいはガラス板に積層された状態で使用される。積層のとき使用される接着剤との相性、加わる熱や圧力が作用し、前面フィルターの外観不良や変色を引き起こす可能性がある。開発した製品について単体の性能評価はもちろん、実使用状態を想定した耐久性も十分であることを確認している。

エ)製造技術
 原糸開発から量産製造技術、更に検査にかかわる様々な技術開発を行い、現在至っている。

  • 広幅低密度織物熱処理装置開発(布目曲がり自動修正機能付き)
  • 広幅、長尺メッキ加工技術確立(走行低張力化、処理液の自動濃度管理)
  • 連続黒化装置及び自動液管理装置の開発
  • 枚様メッシュの自動検査および自動搬送装置の開発
PDPの市場拡大と共に電磁波シールドメッシュの生産も増大し、2006年度は18億円、2007年度は22億円の売り上げが見込まれており、セーレンの主力商品として成長が期待されている。


機能性シースコアアクリル繊維群“コアブリッド”の開発 越智亮、堤晋一郎他 p17
  矢吹和之、繊維と工業、Vol.63,No.5 (2007)p128〜p130

三菱レイヨンは、新規に開発した湿式紡糸用芯鞘ノズルを用いて機能性芯鞘複合アクリル繊維群(コアブリッド)の開発に成功した。一般的な同種ノズルとの違いは下記の通りである。
  標準ノズル 湿式紡糸用芯鞘複合ノズル
ノズルたわみ許容範囲 広い 狭い
孔位置加工精度許容範囲 広い 狭い
ノズル厚さ 薄く成型可能 厚くする必要あり
ノズル加工方法 パンチング加工 異形ドリル加工
多ホール化 容易 困難
精密加工 あまり必要とされない 非常に困難
生産性

コアブリッドシリーズの展開
 「コアブリッド・ルーモ」人間の体温近くの温度で可逆的に相変化する特殊ポリマーを芯部に複合化することで、衣服内環境温度を快適温度に維持する温度調節繊維である。特殊ポリマーが周囲の熱を吸収・放出することで現れる温度変動抑制効果は、レギュラーアクリルと比較すると2.0〜2.5℃に達する。他素材との混紡・交織・交編が可能であり、製品中への混率30〜60%で実用効果とアクリル繊維本来の特徴を両立することができる。
 「コアブリッド・エレキル」繊維の芯部に白色系導電微粒子を複合化しており、静電気を瞬時にコロナ放電させることができ、その静電性能は摩擦耐電圧で約2000Vと非常に高い値を示す。さらに、繊維鞘部には抗ピルアクリル繊維を用いており、この繊維を製品中にブレンド使用しても抗ピル性を維持でき、いわば導電性と抗ピル性を兼ね備えた素材でもある。
 「コアブリッド・サーモキャッチ⊥繊維の芯部に太陽光の持つエネルギーを熱エネルギーとして活用することができる白色系光吸収・発熱微粒子を練り込んでおり、レフランプ500W250kJ/m2/hr、20℃一40%RHの環境下において衣服内を数分で2〜8℃上昇させる効果を有している。
 「コアブリッド・タイニー」湿式溶液紡糸技術を十分に活かし、熱溶融性を持たないアセテートポリマーを芯部に導入している。さらに、特殊化学処理を施すことで、酢酸消臭性能を90%以上、アンモニア消臭性能を70%以上にまで高めることができる。


ポリエステル繊維to繊維実現のためのケミカルリサイクル技術開発
  向井浩二、石原健一、宮本正教 p19

 繊維製品に含まれる染料の除去技術の改良として、繊維に熱をかけ繊維分子間の間隙を広げ染料を抜け易い状態とし、更に特定の溶剤で抽出することにより容易に除去が可能となる。また、ポリエステル以外の異種素材については、素材の温度による物性の違いに着目し反応温度を制御することにより溶解、未溶解状態をつくることによって、容易に除去できる技術を確立した。これらの技術確立により、ポリエステル繊維製品層から、石油から製造されると同等の高純度ポリエステル原料を回収し、この回収原料を用いてバージンと同等のポリエステル繊維製品を作る「繊維to繊維」技術の確立に成功した。また、この技術による環境負荷削減効果は石油からポリエステル原料のジメチルテレフタレートを製造したケースと比較して大幅な消費エネルギーの削減、CO2発生量の削減を達成しており環境に易しい技術であると言える。


新原料リサイクルプロセスフロー図

繊維to繊維の工業化状況
繊維製品のリサイクルは、エンドユーザーが多岐にわたり、容器包装リサイクル法のような法制度が確立されていないため、帝人はポリエステル繊維のリサイクルを推進するシステムとして独自の「エコサークル」を組織し、関係先と協力しで使用済み繊維製品のリサイクルシステム構築に取組んできた。現在、アパレルメーカーや流通企業よりなる「エコサークル」メンバーは国内外で70を越える数となっている。この「エコサークル」は、国内では既にユニフォーム、学生服、体育衣料、スポーツウェア、カーテンのリサイクルが実現している。また、海外では米国のアウトドアアパレルメーカーであるパタゴニア社と完全循環型リサイクルを共同で展開しており、今後グローバルに展開して行きたい。


溶融紡糸型ナノファイバーの開発 
  越智隆志、武田昌信、藤井一 p21

 本技術は、ポリマーブレンド繊維から海ポリマーを除去することで直径数十〜100nm程度のナノファイバーを得るものであるが、口金孔内での流動や糸の細化過程を厳密に制御することで工業化可能な紡糸性を達成した。これにより、既存の溶融紡糸設備を活用できることに加え配向結晶化の制御が可能となり、ナノファイバーの力学特性や耐熱性などを向上できる。溶融紡糸ナノファイバーは、自己集合しヤーンを形成するので織編あるいは不織布化することができる。また、このナノファイバー・ヤーンをカット・叩解することで、ナノファイバー液体分散体を得ることができ、さらにこれからナノファイバー薄膜を得ることもできる。このような多様な製品形態は本技術により初めて可能となったものである。上記の多様な製品形態により、ナノファイバーの様々な新しい特性を明らかにした。例えば、ナイロン・ナノファイバー・ヤーンは吸水膨潤し容易に変形することを見いだし、この特性を活かす用途としてスキンケアクロスなどの美容用品に応用したところ、極限的な細さのナノファイバーが汚れをきれいに拭き取るだけでなく、肌のダメージも小さくできることがわかった。これは、ナノファイバー・ヤーンが肌のキメ(溝)に沿って容易に変形するため、ナノファイバーがキメの奥まで届くと同時に、過剰な応力を吸収しているためと考えられた。さらに、この原理を工業用ワイピングクロスにも応用した開発も進めている。また、通常ナイロンの3倍以上の優れた保水性やアンモニア吸収能力がある。



2.一般講演

レーザーエレクトロスピニングによる極細繊維の作製
   筏浩、仲田一尋他 p35

 溶媒を使用せずに極細繊維を作製する新規手法として、炭酸ガスレーザーを利用したレーザーエレクトロスピニング(LES)法開発した。このLES法により、ポリマーを炭酸ガスレーザーで均一急速加熱してポリマーを溶融し、ポリマーが熱分解する前に、電場の力で瞬間的に引き伸ばして極細繊維を作製することができる。本研究では、ポリエチレンテレフタレート(PET)等を原料繊維として、LES法による繊維の極細化を検討した。
 平均直径が196μmのPET繊維を試料として下図の方法で実験した。試料は送り出しキャタピラーによってノズル部分へ供給され、ノズル部分で電圧が印可される。ノズルから送り出された繊維は、レーザーで加熱されて溶融状態となり、電場の力でコレクターローラに向かって引き延ばされる。実験では、ノズルとコレクターローラーの距離を50mmとし、繊維の送出速度、レーザーパワーを5〜6Wとした。印加電圧0〜15kV、巻取速度を5.3〜21.7m/minに変化させて実験を行った。また、CCDカメラを用いて繊維の細化挙動を観察した。巻き取った繊維について、顕微鏡を使い、直径と複屈折を評価した。


溶融紡糸エレクトロスピニング装置

カーボンナノチューブの製糸に関する研究
  喜多幸司、西村正樹、赤井智幸他 p39

 高密度垂直配向CNT(ブラシ状CNT)を原料としてCNT糸を製糸する技術開発を行なっている。既報では、糸車式製糸法によりCNT撚糸を作製している。その結果を踏まえ、ここではブラシ状CNTからの引き出し、撚り掛け、巻き取りを連続化したCNT撚糸の製糸装置を開発した。
 糸車式製糸法の欠点は、引き出し、撚り掛け、巻き取りの各工程の連続化が困難なであつた。そこで、製糸における各工程間の切り替え動作をなくすためにブラシ状CNT基板をモーターに把持して回転させることで撚り掛けを行い、巻き取りボビンでCNT撚糸を引き出しながら巻き取る基板回転式の製糸機構を考案した。基板回転式製糸機構の模式図をFig.1に示す。この機構を採り入れて試作した製糸装置は基板回転部とマイクロジグ部、巻き取り部、操作部から構成されている。マイクロジグは、ブラシ状CNTから効率的にCMNTの繊維の引き出しを行うツールであり、後述の製糸実験では先端直径30μmのマイクロジグを選択して用いた。
 連続製糸装置を用いて直径2〜10μmの範囲でCNT撚糸の製糸実験を行なった結果、最大10mの長尺製糸に成功した。また、構成要素のCNT自体が非常に細いために、通常の紡績糸と比較すると極めて大きな撚り数(数万T/m)のCNT撚糸を作製できることがわかった。さらに、撚り数と表面撚り角度には良好な比例関係が認められた。この製糸実験で得られたCNT撚糸の引張り強度を、自動荷重試験機を用いて測定した結果、最大550MPa(4.4N/tex)程度であった。また、引張り強度は撚り角度が20〜30度の範囲において極大値を示した。一方、CNT撚糸の電気抵抗は、撚り数が増加するにつれて減少し、最小値は約70kΩ・mm2/kmであった。これは、撚り数が大きくなることで撚糸の構造が緻密になりCNT間の接触抵抗が低減したためと考えられる。

基板回転式製糸機構の模式図

ポリエステル綿混紡の簡易分離法の開発
  大内秋比古、樋田竜男、他 p182

 ポリエステルと綿の混紡繊維の分離技術について検討を行い、酸触媒を用いた加熱により混紡繊維から綿だけを簡便な処理により選別除去できることを見出した。そこでまずこの分離条件の最適化を行う為に綿布の酸加水分解条件を検討し、次いで綿ポリエステル混紡の実際の分離を行った。
 まず、綿布を(1)10N塩酸、または(2)10N塩酸とトルエンの2:3混合溶液に投入し95℃で所定時間撹搾、または(3)10N塩酸に含浸させた綿布を95℃トルエン中で所定時間撹搾を行い、生成したセルロース粉末と残留綿布を分離し、十分水洗後真空オーブン中室温で乾燥し、それぞれの重量を測定した。また、同様の操作を10N硫酸中でも行った。更に、綿ポリエステル混紡(1:1)ニット織物を酸触媒水溶液を含む炭化水素中で所定時間加熱撹搾し、同様の後処理を行いセルロース粉末とポリエステル布に分離し、十分水洗後真空オーブン中室温で乾燥して混紡の分離状態を観察した。
 (1)の処理条件では、約6分の処理により綿布は完全にセルロース粉末に分解し、その回収率は約90%であることが判った。(2)及び(3)の処理条件でも同様の結果が得られた。また、10N塩酸を用いた場合にも硫酸と同様の結果が(1)〜(3)のいずれの処理条件でも得られることが判った。綿ポリエステル混紡を用いて同様の処理を行うと、ポリ.エステルは布の形態を保ったままであったが、綿はセルロース粉末となりポリエステル部分より脱落し、効率良い混紡の分離ができることが判った。


溶融紡糸により得られる熱可塑性セルロース繊維の研究
  荒西義高、市川智子、山田博之、西尾嘉之 p186

 セルロースは分子鎖内、分子鎖間の極めて強固な水素結合のネットワークにより、熱可塑性を示さない材料である。そのため、溶融紡糸法を採用するにはセルロースの熱可塑化を達成することが必須の要件となる。セルロースアセテートなどのセルロース誘導体は可塑剤の添加によってある程度の熱可塑性を示すようになり、メガネフレームなどに活用されている。しかしながら溶融紡糸を考える場合には、非常に高度の熱流動性を有していることが必要であるため、これら従来の組成物では対応ができない。セルロースの水酸基を化学修飾して水素結合を抑制することは、熱可塑化に対して良好な効果をもたらす。セルロースアセテートの残存水酸基を基点として環状エステルの開環グラフト重合を行った熱可塑性セルロース組成物は溶融紡糸に供しうることが分かった。また、水酸基を基点とする嵩高い脂肪族エステル側鎖の導入によっても溶融紡糸に供しうる組成物が得られることが分かった。
セルロースの化学修飾による最適側鎖の設計を行うことによって、溶融粘度および伸長粘度を大幅に低下させうる熱可塑性セルロース組成物が得られたため、溶融紡糸の検討を行った。口金から紡出された糸条は溶融状態であるため、固化が完了するまでは伸長変形が進み、一般的な溶融紡糸プロセスによって繊維化が可能であることが分かった。但し、細化プロフィールについては、分子鎖の剛直性もあって汎用ポリマーと比べると特徴的なものとなる。繊維の断面設計は容易であり、絹様の三葉断面はもちろん、複数の中空部を有する田型中空や吸水性の向上を目的とした手裏剣型断面、極細繊維を得るための海島複合繊維などを得ることができることが分かった。また、溶融紡糸技術の適用によって、セルロース系繊維でありながら単糸繊度が0.1dtex以下となる超極細繊維や見掛け比重が1以下の中空軽量繊維を得ることが可能となる。

図1 得られる繊維断面の例

微生物産生ポリエステルの高性能化に向けた材料設計
   岩田忠久 別冊 p8

 自然環境中に存在する野生のポリエステル合成菌が生産する野生株産生P(3HB)の重量平均分子量は、約60万程度である。一般に高分子材料は、分子量が増大すると物性が向上することから、P(3HB)においても、まず高分子量化を検討した。我々は、P(3HB)合成菌であるRaistonia eutrophaH16由来のPHB生合成遺伝子(phbCAB)を導入した組換え大腸菌Escherichia coli XL1-Blue(pSYL105)を用い、炭素源としてグルコースを用い、様々な培養条件を検討した。その結果、遺伝子組み換え大腸菌を用いた.P(3HB)の発酵合成において、培地のpHが分子量に大きな影響を与えることが分かった。培養時のpHを酸性側にシフトすることにより、重量平均分子量500-2000万を有する超高分子量P(3HB)の生合成に成功した。今回我々は、超高分子量P(3HB)を用いて、新たな延伸法を開発することにより、高強度・高弾性率繊維の作製に成功した。まず、溶融押出したP(3HB)を氷水中に急冷し、非晶質繊維を作製した。次いで、この非晶質繊維を、氷水中で約6〜12倍に冷延伸することにより、配向非晶質繊維を作製した。さらに、この配向非晶質繊維を室温で約6〜8倍に延伸することにより、冷延伸・二段階延伸された高配向非晶質繊維を得た。この50倍以上に延伸された高配向非晶質繊維を熱処理することにより、破壊強度1.3GPa、破壊伸び35%、ヤング率18.lGPaの生分解性および生体適合性を有する高強度繊維の作製に世界で初めて成功した。さらに我々は、前述の冷延伸・二段階延伸法を改良することにより、市販されている通常の分子量(60万程度)のP(3HB)からでも高強度繊維を作製できる微結晶核延伸法を開発した。微結晶核延伸法とは、急激な結晶化を抑制しながら微小な結晶核を形成させ、その結晶核を起点として分子鎖を高配向させる延伸方法である。まず、溶融一急冷によって非晶質繊維を作製し、これを氷水浴中にて一定期間静置することで、結晶核を形成させ、その後、室温で延伸することにより、分子量に依存することなく、高配向繊維の作製を可能にした。この微結晶核延伸法によって、市販のP(3HB)からでも破壊強度740MPaを有する高強度繊維を得ることができた。この微結晶核延伸法は、P(3HB)共重合体にも有効であった。P(3HB-co-3HV)は、これまでいくつか繊維化の報告例はあるが、破壊強度は200MPa程度と低いものであった。しかし、今回我々が開発した微結晶核延伸法をP(3HB-cσ一3HV)に適用することで、低分子量である市販のP(3HB-co-3HV)ではこれまで得ること.ができなかった、破壊強度1.3GPaという高強度繊維の作製に成功した。この微結晶核延伸法は、微生物産生ポリエステルだけでなく、他の生分解性ポリエステルの繊維化にも適用でき、簡便に高強度繊維を作製できる技術として期待される。


金属ナノ微粒子を複合した導電性ポリビニルアルコール繊維 
  大前好信、西山正一他 別冊 p40

【金属ナノ微粒子の形成技術】 PVA繊維に銅イオン(Cu2+)を付与し、繊維内部にて[PVA-OH-Cu2+]錯体を形成させる。次いで、硫化物イオン(S2−〉で処理することで、繊維内部のCu2+をCuxS(X=1〜2)として繊維内部に微細に析出させた。錯体ユニットの大きさは数A〜nmレベルと考えられることから、析出するCuxsもナノサイズのものとなる。PVA繊維の高次構造や、Cu2+の配位状態、析出反応条件を制御することで、CuxSの分散性や繊維物性を自由に設計できる可能性も見出した。

【高導電性PVA繊維の特徴】 上記の方法によって創出されたCuxSナノ微粒子複合繊維の最大の特徴は、繊維内部に形成された金属微粒子のナノサイズ効果にある。導電性繊維としては、数μm程度のカーボンブラック粒子を練り込んだものが一般的に汎用されているが、その体積固有抵抗値はせいぜい103Ωcm程度である。本素材は、そのナノ粒子の比表面積の増大、粒子問距離の減少効果により、微粒子10〜15wt%程度の複合量にてIO−1Ωcmレベルの高い導電性を示す。また、導電パスが繊維内部(内部導電〉にあることも大きな特徴となる。繊維表面にCu-Ni等の無電解メッキを施したいわゆる金属メッキ繊維では、屈曲や磨耗、塩水腐食などにより、導通パスであるメッキ層が破壊され、導電性が低下する問題があるが、本素材は導電パスを繊維内部に有しているため、それらに対する耐久性を備えた素材であることが期待される。



U.化繊協会加盟会社の直近1カ月の特許出願状況 (6月公開分)

PDFファイルをご覧ください(370KB)



目次ページへ トップページへ戻る

当ウェブサイト上の掲載情報、画像(写真)等の無断複写・転載を禁止します。