2008年5月号

T.繊維学会誌、繊維機械学会誌等に2008年4月号で掲載された化学繊維素材の紹介記事

1.繊維学会誌

特集<高性能高分子の最近の展開−機能化−> 繊維と工業 Vol.64,No.4,(2008) p112〜129
   溶媒に可能な芳香族ポリケトン材料の開発 前山勝也 p.112〜116

有機高分子材料の中で、優れた耐熱性と機械的特性を有する特殊エンジニアリングプラスチックに用いられる素材として、ポリイミド、ポリアリレート、芳香族ポリエーテルケトン、ポリエーテルスルホンなどが広く知られているが、いずれも芳香族単位を含む重縮合系高分子である。その中で、主鎖が芳香環、エーテル結合およびケトン部位からなる芳香族ポリエーテルケトンは交差共役型高分子であり、高い耐熱性と機械的特性、耐薬品性を有している。
芳香族ポリエーテルケトンの製法、特徴、開発動向および筆者らがここ数年展開してきた溶媒キャスト法によるフィルム形成が可能な芳香族ポリエーテルケトンおよびエーテル結合を主鎖に含まない全芳香族ポリケトンの開発について概説している。


   芳香族を特異的に導入したフェノール樹脂の合成と機能 山岸忠明、他 p117〜121

フェノール樹脂の分子構造は、分子形態、溶液物性、熱特性、溶解特性などの各種物性に大きく作用する重要な因子になることが予想される。本研究では、フェノール樹脂の高性能・高機能化の一環として、フェノール樹脂への芳香環の選択的導入を検討し、耐熱性や溶解性に及ぼす分子構造の影響を検討した。フェノール樹脂は、通常、フェノール類とホルムアルデヒドとの付加縮合により生成される。一つの芳香環にアルデヒド基とヒドロキシル 基を併せ持つ4一ヒドロキシベンズアルデヒド(以下4-HB)は、ベンズアルデヒド成分あるいはフェノール成分として働くことが期待され、樹脂中の芳香環密度を増加させることが可能である。そこで今回、4-HBを用い合成段階における選択的ポリマー化を試み、フェノール樹脂骨格に芳香環を特異的に導入することを検討した。


   燃料電池材料としての高性能高分子 坂口佳充 p122〜125

燃料電池に高分子電解質膜が使用されたのは、1960年代前半に宇宙開発用としてGemini宇宙船に使用されたスルホン化ポリスチレンージビニルベンゼン系架橋膜が最初であるが、耐久性が不十分なためその後の宇宙開発にはアルカリ燃料電池が使われた。1960年代後半、パーフルオロカーボンスルホン酸系膜が開発され、優れたプロトン伝導特性と電気化学的な安定性から固体高分子形燃料電池用電解質膜としてほぼ独占的な立場を築いた。このように開発初期に炭化水素系高分子電解質膜の化学耐久性がフッ素系膜に比べて大きく劣ることが示されたことから、炭化水素系膜に関心が向けられることのない時期が続いた。
1990年代になり、エネルギー問題や環境問題を背景として燃料電池技術が注目されるようになると、フッ素系膜はガラス転移温度がさほど高くないため運転温度が80℃付近より上げられないこと、コストが高いことなどの問題点が指摘されるようになり、炭化水素系膜に再び目が向けられることになった。
この際着目されたのが、耐熱性、耐溶剤性、高機械特性を有する芳香族縮合系ポリマーを骨格とする高生能高分子であり、ポリエーテルケトン類、ポリエーテルスルホン類、ポリアリーレン類、ポリベンズイミダゾール、ポリイミド等において、ポリマー鎖中にスルホン酸基を導入したものが検討されるようになった。これらの高分子材科が選ばれたのは、高温運転を目指す固体高分子形燃料電池が主目的として考えられていたためであるが、耐久牲を主とする実用化への高いハードルに直面することになった。
しかし、高性能高分子からなる高分子電解質膜は一般にフッ素系膜に比べてメタノール透過性が低い特徴を持つことから、徐々にダイレクトメタノール形燃料電池(DMFC)用電解質膜への有力候補して位置づけられるようになっていった。
ボータブル用途、モバイル機器などに応用が期待されるDMFCは、運転条件が比較的マイルドであり、自動車用、定置用燃料電池ほどの長期間にわたる燃料電池寿命が要求されないことから、燃料電池として最初に普及が広まる応用分野として期待されている。
本稿では、燃料電池用高分子電解質膜に要求される特性をもとに、高性能高分子が新しい炭化水素系膜として開発が進められている状況を紹介する。


   ポリイミド微粒子の開発と応用性 浅尾勝哉 p126〜129

ポリイミドは優れた耐熱性を有するポリマーの1つで、スーパーエンジニアリングプラスチックの代名詞となっている。ポリイミドはアメリカの宇宙開発事業の中で生まれた高性能ポリマーであり、開発当初は高性能であるが加工性が困難である上に高価であった。そのため宇宙開発や軍需関連などの特殊な分野でのみ使用されていた。
しかし、1980年代以降、加工性や絶縁性など新規な優れた特性を付与された種々のポリイミドが次々開発され、価格も下がった事もあり多くの分野で広く利用され始めた。
ポリイミドは耐熱性が高いだけでなく、機械的性質(高強度、高弾性)、電気的性質(高絶縁、低誘電率)、耐薬品性、耐放射線性、難燃性にも優れており、過酷な条件下でも使用できる。使用されている形態は多岐にわたるが、大半がフィルムか複合材料のマトリックスであり、微粒子あるいは微粉体についてはこれまであまり注目されていなかった。特に、ナノ〜ミクロンサイズで制御されたポリイミド微粒子の調製方法については殆ど検討されておらず、紹介されはじめたのは1990年代になってからである。
ポリイミド微粒子の調製方法は、1重合時に反応溶媒中で微粒子化させる化学合成的(沈殿重合法)方法、2ポリイミド塊状物を機械的に粉砕する方法、3ポリィミドの溶液を貧溶媒と混合する事によって微粒子を再沈殿させる方法がある。それぞれの手法によって形態や粒子径、粒度分布が異なったものが得られる。
単分散で球状の微粒子を調製するには1の化学的合成法がもっとも適しているが、反応の制御や精製、乾燥などが困難である。2の機械的方法は、大量に調製する事が可能であるが、粉砕機など特殊な装置を必要とし、更に得られる微粒子の殆どが不定形状であり粒度分布も広くなる傾向にある。
3の再沈殿法は条件が整えば非常に微細な粒子を得る事ができるといわれているが、多くの場合粒状やヒモ状になるため最終的に粉砕が必要であり、また残存溶媒の除去が困難である。どれも、一長一短はあるが、目的やニーズに合わせて、種々の方法で検討が進められている。
本稿では、著者が開発した@の沈殿重合法によるナノーミクロンサイズの単分散球状ポリイミド微粒子の調製方法、表面修飾や応用について紹介する。


2.繊維機械学会誌

創立60周年記念号 Vol.61,No.4(2008)
記念特集 我が国の繊維産業の10年後
  強み(蓄積技術と先端産業)を活かしてハイテク繊維産業に再生 松本三男 p.251〜254

我が国の繊維産業が更なる発展を創出できる可能性は、1)ニーズを生み出す市場環境と2)改良技術を生み出す技術環境であり、我が国の繊維産業の10年後に向け是非注力すべき新技術・新素材・新製品は、1)複合紡糸とその多様化技術により1新形態の創出、(捲縮形態、微細・シャープエッジ形態、極細形態)、2新機能・新感性の創出(新機能、新繊維の形成)などが期待される。

 

U.化繊協会加盟会社の直近1カ月の特許出願状況 (2008年4月公開分)

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