2008年6月号

T.繊維学会誌、繊維機械学会誌等に2008年5月号で掲載された化学繊維素材の紹介記事

1.繊維学会誌

特集<平成20年度繊維学会・技術賞受賞者> 繊維と工業 Vol.64,No.5,(2008) p.A6〜A12
   高靭性セメント系複合材料用PVA繊維「パワロン」の開発 小川 敦久、保城 秀樹  p.A6

ミシガン大学Victor C.Li教授との共同研究により破壊力学に基づいた材料設計を行いSHCC(ひずみ−硬化性セメント系複合材料)用の補強繊維としてPVA繊維「パワロン」を開発した。
技術内容:1多くの微細なひび割れによって高い破壊靭性を示すSHCCを実現するために好適な繊維とセメントとの作用パラメーターを明らかにすること、2溶剤系湿式紡糸により15dtexという比較的太い繊維径で、かつ高い強度・弾性率と好適な相互作用パラメーターを有するPVA繊維を製造する。


   心理・生理快適性素材「メンタルバランス」の開発 石丸 園子、浜口 雄二、宮島 光生、古谷 哲朗 p.A7

「眠気⇔全般的活性、リラックス⇔緊張」という心理状態の相互関係を多変量解析により整理し、その心理状態を脳波、心電図などの生理計測値で説明するという心理・生理評価技術を構築した。さらにその技術を駆使し特定の接触刺激を付与することで、心理・生理的に「リラックス・全般的活性」の傾向を示す素材「メンタルバランス」を開発した。具体的には、複合素材からなる特殊紡績糸を開発し、「ふんわり・やわらか」触感を有する編み物に仕上げた。


   “ナノマトリックス”加工技術製品の拡大 桑原 厚司、関 昌夫、菱沼 澄男 p.A8

繊維表面特性と薬剤との親和性の関係、フィラメント束や布帛構造に起因する毛管現象による薬剤水溶液の移動、水溶液の温度依存性や水分移動、溶媒の蒸発による相変化などの様々な現象が生産工程中で起こるという状況を踏まえ、新たなプロセス開発を行った。"ナノマトリックス"加工技術は、自己組織化の概念に着目し、1繊維表面に機能性薬剤を均一に自己配列させる技術、2自己配列した機能性薬剤の構造を維持し、固着させるプロセス技術を確立することで、布帛を構成する単繊維の一本一本に対して、任意の膜厚(数nm〜数百nm)の機能性薬剤の均一被膜構造を自発的に形成させることに成功した。
さらに、ナノオーダーの厚さの皮膜であるという特徴を活かし、多層積層構造による機能複合、機能の高度化や、ナノ粒子とのナノコンポジット被膜による機能複合にも成功している。


   異染性複合繊維素材「ミクシカ」の開発 山本 篤、能村 素郎、黒田 久 p.A9

異染性を有する長繊維織編物は、分散染料に染まらないレーヨンやキュプラといったセルロース長繊維と分散染料可染性の長繊維を混繊・片染めすること、あるいはポリエステルのT&Tヤーンによる分散染料の染着差を利用した異染性技術がある。 しかしながら、市場で得られるセルロース長繊維の繊度は25dtex程度が下限であることから、異染色効果や風合いの繊細な表現は困難であった。 またT&T繊維ではその鮮明な濃淡差を表現することはできなかった。
今回確立した異染性複合繊維素材「ミクシカ」の技術は、1細繊度糸製造技術の開発、2新たな異染性を表現するテキスタイルの開発により、なされたものである。
1細繊度糸製造技術の開発は、アセテートが鹸化処理により、セルロース繊維へと改質されたと同時に約40%の減量(細繊度化)が達成されることに着目し、33dtexのジアセテート長繊維を製造して、20dtexのセルロース長繊維を得る。さらに、ジアセテート繊維と同一条件で同時にトリアセテート長繊維を紡糸・混繊するプロセス技術を確立した。 これにより、生産性と紡糸巻取り性を大幅に改善した30dtex未満のジアセテート長繊維の製造、すなわち20dtex未満のセルロース長繊維とトリアセテート長繊維の混繊糸を安定且つ低コストで製造することに成功した。
2新たな異染性を表現するテキスタイルの開発は、細繊度セルロース長繊維により得られる異染性を表現した織編物とするために、鹸化による細繊度化を見越した糸加工条件およびテキスタイル規格を確立した。さらに、トリアセテート長繊維を混繊する場合には、ジアセテート長繊維のみを選択的に鹸化する特殊な条件を採用した。これにより、トリアセテート長繊維の優れた発色性とドライタッチを生かした高級で繊細な異染性織編物を得ることが出来る。


2.繊維機械学会誌

繊維機械学会誌 Vol.61,No.5.(2008)
シリーズ 化合繊の基礎と最新の技術
  ポリエステル繊維の染色技術(その2) 峯村 勲弘 p.37〜42

繊維の染色性改善技術、染色の方法、着色技術の動向と今後、染色堅牢度について解説している。今後の課題は、環境対応の「エコフレンドリー染色加工技術の追求」、原油高騰対応の「省エネルギー技術」、収益性の向上を目指した「高付加価値加工技術の開発」、機能の高度化を目指した「ナノ加工技術の開発」であろう。


  超軽量高強力ナイロン織物「シルファインNシリーズ」の開発 刀根 肇 p.43〜45

タイヤコード用の高強力ナイロン繊維を基礎として衣料用の高強力ナイロン“シルファインN”を開発した。シルファインNシリーズは同繊維を用いて開発した薄くて軽量な羽毛布団カバー用の高強力織物である。技術の特徴は、111dtex高強力マルチナイロンフィラメントの紡糸技術、2超極細糸の製織技術、3羽毛吹き出し防止技術である。
同織物の特徴は、1軽量(26g/m2)、2コンパクト(厚さ:40μm)でありながら羽毛吹き出し防止性に優れる(通気度:1p3/p2/s未満)、3ソフトな風合い、4高い強度(引き裂き強力:経緯とも10N以上)、5鮮明な発色性である。


U.化繊協会加盟会社の直近1カ月の特許出願状況 (2008年5月公開分)

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